大阪バイオサイエンス研究所 発生生物学部門-古川ラボ(Furukawa lab)


古川ラボ研究内容中枢神経系の構築と機能について網膜をモデル系として遺伝子レベルから個体レベルまで包括的に解き明かしたい
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古川ラボ 研究内容


 ヒトの中枢神経系には1千億~数千億といわれるニューロンが存在すると言われています。
これらニューロンは多様性にとみ、それぞれ様々な形態や機能を有しています。これら数千億のニューロンが正しい場所で正しい形態と機能を獲得して、はじめて脳が正常に機能できます。この膨大な数のニューロンのアイデンティティや神経回路の形成はどのようにDNA上にプログラムされているのでしょうか?
これは、神経科学ならびに発生学の大きな謎の一つです。当研究部は、この問題に、網膜を中枢神経系のモデル系としてチャレンジしています。
 網膜を例にとれば、視細胞をはじめとするニューロンもミューラーグリアも共通の未分化前駆細胞から分化してくることが知られています。 この発生様式は、基本的には脳においても共通です。それぞれニューロンやグリアは、
未分化前駆細胞からどのように特定の運命を選び取るのでしょうか。次に、ニューロン同士がどのように相手を正しく認識して、シナプスが形成されるのでしょうか。
そして、形成された神経回路はどのように行動や生理機能を実現するのでしょうか。私たちは、こういった問題に網膜をモデルシステムとしてチャレンジしています。

 方法論としては、当研究室が得意とする分子生物学的手法による重要な遺伝子の単離、様々な分子生物学的実験、組織学 (in situハイブリダイゼーションや免疫染色など)、遺伝子改変マウスの作製、カエルとゼブラフィッシュでの発生工学、個体レベルでの視機能アッセイなどを用いています。「in vivoでの機能を見る」研究を重視しています。




研究テーマ

1)シナプス形成の分子メカニズム
2)ニューロンの分化にかかわる転写システム
3)網膜幹細胞の細胞周期、分化制御機構
4)ゼブラフィッシュ・マウス遺伝学を用いた繊毛(cilia)の形成メカニズム
5)遺伝子改変マウスの作製と視覚機能の解析



1) シナプス形成の分子メカニズム


膜は脳の将来間脳になる部分が膨らんでできる 組織で すので、中枢神経系に属します。
網膜は美しい層構造を形成し、形態学的にも比較的シンプルで発生期のニューロンの形態を観察するのにも適しています。
シナプスの位置も明確に決まっており、組織で電子顕微鏡レベルのミクロな解析をするのにも、網膜であれば明確な検証が容易です。 近年の色々な研究によって、軸索がどのように標的に向かい伸張していくかというメカニズムの理解は比較的理解が進んできましたが、シナプス結合の分子機構はまだよく分かっていません。
私たちは、最近、新規細胞外マトリックス(ECM)蛋白質ピカチュリンを単離し、ピカチュリンがジストログリカンと結合することによって、視細胞—双極細胞間のシナプス形成分子として機能することを見出しました(Sato et la., Nat. Neurosci., 2008)。
意外にも、網膜でもシナプス形成、神経回路形成のメカニズムはほとんどわかっていませんでした。
私たちはピカチュリンを突破口として、網膜のシナプス形成や神経回路形成の解明を進めようとしています。

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2) ニューロンの分化にかかわる転写システム


神経系に存在する様々なニューロンの細胞運命はどのように正しく決定されるのでしょうか?
そして、それはどのようにDNA上にプログラムされているのでしょうか?エピジェネティックな要素はどれくらい効いているのでしょうか? 私たちは網膜の光を受け取るニューロンである視細胞に注目し、視細胞が前駆細胞からどのように運命決定され、分化してくるのかを転写制御の観点から明らかにしてきました。私たちはOtx2という転写因子が視細胞の運命を司るマスター遺伝子であることを発見しました (Nishida et al., Nat. Neurosci. 2003)。
我々はジーンチップ解析(マイクロアレイ解析)を用いて、視細胞の発生に関わる分子の網羅的同定を進めており、その中から視細胞の分化に関わる転写因子を同定し、ノックアウトマウス、コンディショナルノックアウトマウスの作製と解析を精力的に行って、視細胞の運命決定から最終分化までのメカニズムの全貌を生体レベル(in vivo)で明らかにすることを目指しています。




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3) 網膜幹細胞の細胞周期、分化制御機構


膜を含む中枢神経系では複数種類のニューロンが複雑な回路を形成し、ニューロンネットワークが情報をすばやく伝達・処理します。それでは、ネットワークを形成するニューロンはどこからくるのでしょうか?
発生中の網膜では、未分化前駆細胞が分裂を繰り返し、ほぼ決まった数の複数種類のニューロンが、決まった割合で産み出されます。細胞数が少なすぎても多すぎても、また、異なる種類のニューロン同士の割合が異常であっても、正しく回路が形成されず、正確にものを見ることができません。また、増殖が不足しても適切なタイミングで止まらなくても発生が異常になります。正常では幹細胞・前駆細胞増殖がどのように正しく止まるように制御されているのかという問題は、癌細胞がどうして増殖が止まらないのかという問題と表裏一体です。我々は以前、クロマチン制御因子Hmgb3が網膜幹・未分化前駆細胞の増殖調節に必須であることを見出しました (Terada et al., Dev. Biol., 2006)。
このHmgb3を出発点として、私たちは引き続き網膜幹細胞の増殖とそれが発生途上で止まるメカニズムを明らかにしようとしています。 最近、医学的応用を目指して、体の各組織における幹細胞・未分化前駆細胞の研究が盛んです。我々は、網膜幹細胞・未分化前駆細胞の研究を通じて、中枢神経系における適切な細胞数と適切なニューロン同士の割合というものがどのように実現するのか、分子的な機構を明らかにしたいと考えています。





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4) ゼブラフィッシュ・マウス遺伝学を用いた繊毛(cilia)の形成メカニズム


膜では、視細胞と呼ばれる感覚ニューロンが光センサーとなり、光をとらえます。視細胞には、繊毛と呼ばれるマイクロチューブでできたアンテナが生えており、光をとらえる分子(オプシン)の輸送に重要な役割をはたしています。この繊毛が壊れると、網膜色素変性症と呼ばれる失明を伴う疾患に至ることが知られています。
また、眼以外の組織でも、繊毛の機能異常は、疾患の原因となることが知られています。
繊毛関連遺伝子の異常により、臓器非対称性の異常や、腎臓病、肥満、多指症、不妊症などを引き起こすことが
わかってきましたが、 その分子機構は未解明な部分が多く、その分子メカニズムの解明に期待が持たれています。
これまでに、私たちは、繊毛の機能解析に適したモデル動物であるゼブラフィッシュを用いて、繊毛に局在するタンパク質エリプサが、繊毛でのタンパク質輸送に重要であることを示しました(Omori et al., Nat. Cell Biol., 2008)。
現在、私たちは、ゼブラフィッシュ変異体や、ノックアウトマウスを用いて繊毛が機能する仕組みと、繊毛関連疾患が引き起こされるメカニズムを解析しています。

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5) 遺伝子改変マウスの作製と視覚機能の解析


たちの研究室では、研究室内でトンランスジェニックマウス(BACトランスジェニック含む)、ノックアウトマウスの作製を行っています。受精卵の単離、インジェクション、ES細胞の培養・組み換え体のスクリーニング、 卵管や子宮への卵戻し、凍結受精卵の作製、など一連のマウス生体工学的手法を得意としています。
当研究室のES細胞の相同組み換え体のスクリーニングでは、一回で500~1000クローンを素早くスクリーニングすることができるという極めて効率の良い方法論を確立しています。このマウス生体工学技術を生かして、面白い、あるいは役に立つ遺伝子改変マウスの作製も目指しています。 また、当研究室で作製した遺伝し改変マウスでの視覚機能のアッセイを行っています。網膜電図(ERG)、視運動性反応(OKR)など、OBI内外の共同研究の協力も得て、遺伝子の機能を個体レベルでの生理機能の観点からも理解すべく解析を進めていきます。




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