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 所長
 中西 重忠
はじめに

 当研究所は昭和62年に大阪市の市制100周年を記念して設立され、以来22年の歴史を経た事になります。当研究所は5部門からなる比較的小さな組織ではありますが、これまで独自性に富んだ研究成果を挙げてまいりました。中でも生体に不可欠な細胞死の機能を見いだし、それに関与する種々の機能タンパク質を解明したこと、内因性睡眠物質としてのプロスタグランジンの睡眠誘発の役割を明らかにしてその分子機構を解明したこと、人の細胞に特徴的な発ガンの抑制機構を明らかにしたことなどいずれも画期的な成果であり、国内外で高く評価されているものであります。また、ヒトの自閉症のモデルマウスの作製に成功したこと、網膜幹細胞の分化を支配する遺伝子の発見とその制御機構さらに報酬記憶及び運動記憶の新しい分子機構を明らかにした最近の研究成果も国際的に高く評価されているものであります。当研究所におきましてはこれまでの伝統を継承し、さらに高いレベルでの研究が進められるよう所長以下、研究者、事務職員が一丸となって努力している所であります。
 OBIは任期制を定め積極的な組織の展開を図って次代の研究の方向性を見据えた研究をすることを志向してまいりました。第1研究部および第3研究部を主催する内匠透博士と佐邊壽孝博士が一流大学の教授に栄転されたことに伴い、平成21年度4月より東京大学理学部より小早川令子、高両博士を、また平成22年度4月より国立遺伝研より榎本和生博士を招きそれぞれ第3研究部と第1研究部を主催しております。小早川両博士は匂いの識別と記憶が遺伝的及び環境的な要因によって独自の神経系で制御されているという画期的な成果をあげ、 OBIにおいては引き続き嗅覚系を研究対象にストレスや社会行動など高次な脳機能の制御機構の研究をすすめます。一方榎本博士は遺伝学、分子生物学を駆使してショウジョウバエの機能的神経回路形成の一連の基本的な分子機構を明らかにするという国際的な成果を挙げ、OBIでは引き続き本研究を進めると共に新たに哺乳動物の神経回路形成機構解明の研究も展開することを計画しております。小早川両博士、榎本博士は新進気鋭の研究者であり、両グループの今後の研究の発展を楽しみにしているところです。
 BIの重要な活動の一つは医学、生命科学の発展を市民に伝えることであります。本年度も1月に市民講座を開催し京都大学の山中伸弥教授にiPS細胞に関してお話頂き、また小早川令子博士が嗅覚の仕事を紹介しました。1300名の聴講希望者があり、市民の関心の深さを考え、今後も引き続き市民講座の開催を進めたいと考えています。また平成22年度のOBIの研究に対しては、4月2日、3日に6名の国内外の一流の研究者を委員として研究評価・助言会議を開き、各研究部の研究成果への助言と OBIの活動自体への評価、助言を得たところであります。OBIの活動自体に高い評価を得ると供に建設的な助言を得ることができました。所長といたしましては新たな部門長を含む新しい研究体制のもとに当研究所が第一線の国際的な研究機関として更に発展するため一層の努力をしたいと思っております。
 最後に当研究所の発展に対して物心ともに暖かい援助を下さっている大阪市当局、特に故磯村隆文、關淳一前市長、並びに平松邦夫現市長に謝意を表し、今後も一層のご理解と力強いご援助をお願い申し上げます。また研究所にとって貴重な研究費の補助を頂いている文部科学省、厚生労働省、農林水産省および諸財団に感謝の意を表します。